The TANAKA Lab

Polymerization Chemistry Lab, Kyoto University

カルボランを基盤とした共役系分子の構築

 o-カルボランは炭素原子2個とホウ素原子10個を含む正二十面体型の化合物であり、有機成分である炭素と無機成分であるホウ素が”分子レベル”で複合化したユニークな分子です。近年では、o-カルボランとπ共役系を連結した分子が興味深い発光特性を示すことが明らかになりつつあり、発光材料の足場骨格としての注目が高まっています。我々は、カルボランが共役系に与える幾何学的・電子的効果を解明し、新奇光学材料の創出につなげることを目的に研究を進めています。

高効率固体発光材料の開発と発光過程の解明

 芳香環をo-カルボランに直接結合すると、芳香環からカルボランへの電荷移動に由来した発光が生じます。我々はこの発光を利用して、固体状態において99%以上の効率で発光する分子を得ることに成功しています(文献1)。また発光メカニズムの解明にも取り組んでおり、o-カルボランの炭素-炭素結合と芳香環が垂直に配向することで効率よく発光する「ねじれ型分子内電荷移動(Twisted-intramolecular charge transfer, TICT)」が生じていることや(文献2)、発光の前後で炭素ー炭素結合が特異的に伸長する(文献3)ことを明らかにしています。

1) Naito, H.; Nishino, K.; Morisaki, Y.; Tanaka, K.; Chujo, Y. J. Mater. Chem. C20175, 10047-10054.
2) Naito, H.; Nishino, K.; Morisaki, Y.; Tanaka, K.; Chujo, Y. Angew. Chem. Int. Ed. 201756, 254-259.
3) Ochi, J.; Tanaka, K.; Chujo, Y. Dalton. Trans. 202150, 1025-1033.

機械的刺激に応答した発光色変化

 o-カルボランは球状骨格であることに加え、強い分子間相互作用部位を持たないことから、固体状態において疎なパッキング構造をとりやすい分子です。我々はこうしたカルボランならではの特徴に注目し、こする・叩くといった機械的な刺激に応答して分子のパッキングが密になり、発光色を変化させる分子を開発しています(文献1)。

1) Mori, H.; Nishino, K.; Wada, K.; Morisaki, Y.; Tanaka, K.; Chujo, Y. Mater. Chem. Front. 20182, 573-579.

温度変化に応答した発光色変化

 o-カルボランのTICT挙動は「結合の回転」という分子運動が関わっているため、高温状態にするとより促進されます。我々はこれを利用し、外部温度を発光色の変化として検出できる分子を報告しました(文献1・2)。さらに、カルボランを高分子フィルム中に分散させることで、熱履歴を発光色変化として記録できるマテリアルの開発にも成功しています(文献3)。

1) Nishino, K.; Yamamoto, H.; Tanaka, K.; Chujo, Y. Org. Lett. 201618, 4064-4067.
2) Nishino, K.; Tanaka, K.; Chujo, Y. Asian J. Org. Chem. 20198, 2228-2232.
3) Wada, K.; Hashimoto, K.; Ochi, J.; Tanaka, K.; Chujo, Y. Aggregate 20212, e93.

特異な分子間相互作用を利用した固体発光材料

 o-カルボランの炭素上に位置する水素原子は電子不足性を帯びており、水素結合ドナーとして働くことが知られています。我々はカルボランと窒素環を組み合わせることで、分子間相互作用によって結晶中におけるπ平面の重なり方を制御し、連続的な温度応答性を持つ分子を設計できることを見出しました(文献1)。

1) Ochi, J.; Tanaka, K.; Chujo, Y. Inorg. Chem. 202160, 8990–8997.